高崎の市街地を望み、自然に囲まれた高台に建つMさんの住まい。ご夫妻は共に他県出身ながら、仕事で慣れ親しみ、関東のみならず東北や北陸、東海地方にも行きやすい利便性の良さが気に入り、この地に腰を据えることにした。 「せっかくなら普通とは違う面白みのある家にしたいと思いました」とご主人。建築家と建てた家はなんとX型、これには単にユニークというだけではなく風土に溶け込む理由が隠されている。
冬に越後山脈を越えて赤城山から吹き降ろす北風は、「上州のからっ風」といわれる群馬の名物で、ときに住民を困らせる。 「群馬に来た頃は、あまりの強風に台風かと思うほど驚きました。洗濯物はたちまち飛んで行ってしまうので、絶対に外には干せません」(奥さま)
2階廊下はギャラリーのような雰囲気。窓からの眺望も美しく、「ここで食事をするのもいいなと計画中です」(ご主人) |
この地域では、古くから屋敷林を設けるなどして強い寒風から建物を守る対策が取られてきたが、Mさんの家では建物の造りで回避している。 「冬に吹く強い北風を真っ向から受けないように外壁の配置を工夫しました。また、気密性の高い窓を採用して、暖かな室内環境を保てるようにも。逆に夏は、湖を通って冷気を帯びた南風が吹くため、南側に庭や大きな窓を配置して、気持ちの良い風を取り込めるようにしています」(建築家・伊藤昭博さん)
間取りは、家族がそれぞれの時間を過ごすのにもぴったり。平日、フルタイムで働くご夫妻と高校生のお嬢さまにとって、一人で気兼ねなく過ごせる空間を持つことは必須だった。 そのため、中央部をLDKとし、先端部を洗面室や浴室、個室などのプライベートスペースに。物音を気にせずに個々の時間を満喫しながら、生活動線を交差させることで、自然と家族の交流が生まれるようにしている。近隣の視線を避け、美しい景観を取り込むように壁や窓の配置が考えられているのもポイントだ。 「家中、どこから眺めても景色が良くて、家族それぞれが自分のスタイルで過ごせる。リラックスできるわが家に大満足しています」(ご主人)