海抜10mの安心な高台に転居。サロン形式の「まちの電気屋さん」を併設する家
敷地が前面道路よりも1m高いため、道路側の建物の高さを抑えてボリューム感を緩和している
2018.03.20

海抜10mの安心な高台に転居。サロン形式の「まちの電気屋さん」を併設する家

南海トラフ巨大地震に備えて、20年以上営んできた電気店と住まいを高台に移転。 新店舗はリビングダイニングと一体になるアットホームな雰囲気で、 お客さまとゆっくり触れ合える場に

TRIP
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以前は海抜約3mの津波浸水地域に建つ店舗兼住居で、電気店を営みながら暮らしていたFさんご夫妻。築 31年が経過した建物は傷みが激しく、断熱材が入っていなかったため、冬はとても寒かったという。子どもの独立を機に減築リフォームを検討していた矢先、御前崎沖が震源の駿河湾地震(2009年8月)に遭遇した。 「大きく揺れてとても怖かった」と声をそろえるご夫婦。その約2年後には、東日本大震災が発生。

物件データ 所在地/静岡市清水区
面積/92.54mm²
築年月/2013年5月
設計/荒井建築計画事務所
www.araa.jp

「これがきっかけになり、高台の安全な場所に引っ越そうと決心しました。私たち静岡の人間は、子どものころから南海トラフ巨大地震について教えられています。だから、他の地域の人より地震に対して警戒心が強く、木造の家もかなり頑丈に建てていると思います」(ご主人) 現在の家が建つ敷地は海抜約 10m。古くからある住宅と商店が混在する地域で、店舗を設けるのに適した環境と判断。また、夫婦2人の生活にちょうどいい広さも購入の決め手となった。

ご主人の部屋の壁に小さな窓を設け、店舗の様子が分かるようにしている。お客さまが来てもすぐ分かる
2階の部屋の一部をルーバーにして、1階リビングダイニングの夏の暑い空気を逃げやすくしている
お客さまが気軽に立ち寄れるサロンのような空間を目指した。 接客しながら作業できる修理スペースも設けた

「新しいお店は、商品を陳列せず、お客さまの話をよく聞き、修理の相談をしたり、カタログで商品を選んだりできるサロンのような店づくりを考えていました。テーブルを囲んで話をすれば、お客さまの好みや考えていることを深く理解できると思ったのです」(奥さま) 設計は、建築を学んでいるお子さまからの推薦で、荒井建築計画事務所に依頼した。

店舗はガラス張りで街に開かれたつくりだが、道路より高くなっているため、外からの視線が気にならず、落ち着いた雰囲気
店舗側からダイニングを見たところ。ダイニングの右手にキッチンがある。黒い壁は階段の仕切り壁

「お客さまが心理的に入りやすいように、道路側の建物の高さを低く抑え、敷地奥に行くにつれて高くなるようにしています」1階のリビングダイニングは、3枚引き戸を全開にすれば、店舗と一体になるように計画。「お客さまは家の雰囲気を見て、安心感と親密感を持ってくれるようです」(奥さま) 2階は夫婦ぞれぞれの個室を設けたが、 一部の壁を抜いて部屋をつなげ、お互いの気配が伝わるように工夫。「どの部屋にも窓が欲しい」という奥さまの希望も実現し、開放的で、家じゅうどこにいても明るく暖かい住まいに満足している。

店舗は商品を置かず、テーブルでお客さまの話をヒアリング し、カタログを見ながら商品を提案するサロン形式に
text_ Sayaka Noritake(colonna) photograph_ Hideki Okura
取材協力

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