ワンルーム空間を引き戸で自由に仕切る。 暮らしの変化に合わせてカスタマイズする家
仕切りがなく、視線が抜け、広々としたワンルーム。南側の窓から 入る光が奥まで届き、気持ちいい
2018.02.20

ワンルーム空間を引き戸で自由に仕切る。 暮らしの変化に合わせてカスタマイズする家

3LDKのマンションの一室を水回り以外がひとつながりの空間にリノベーション。 引き戸を自由に設置・移動して間取り変更ができる可変性のある住まい

TRIP
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西宮市内にある築 39年、 62㎡の中古マンションをフルリノベーションして、家族4人の新しい住まいを計画した井上さんご夫妻。家族構成の変化や子どもの成長に合わせて間取りが変えられるプランを希望し、建築家の丹羽洋文さんに設計を依頼した。

物件データ 物件データ所在地/兵庫県西宮市
面積/62m²
築年月/2017年2月
運営・管理/丹羽洋文(すまい研究室)
sumai.us

井上さんの住まいで目を引くのは、家中に張り巡らされた木のフレーム。その正体は、引き戸を設置するための鴨居だ。 「昔の日本の家のように、広い続き間の空間を襖で仕切ったり、開け放したりすることで、簡単に個室や大空間にアレンジできるようにしました。井上さんが住みながら、自分たちで間取りをカスタマイズできるように引き戸を全て同じ寸法で造作し、いつでもどこにでも設置できるようにしてあります」(丹羽さん)

東側の壁一面に棚受けを設置し、収納やテレビ台、デスクとして活用。棚板を追加してカスタマイズ可能

現在は、寝室とクローゼット、和室に引き戸を設置し、その他の空間をつなげてLDKとして広々と使っているが、洗面・浴室以外をワンルームにもできるし、個室をたくさん設けることも可能だ。 「子どもが幼いうちは、子ども部屋はいらないので、その分家族みんなで過ごせる場所を広くとりたい。でも将来、子どもが『自分の部屋が欲しい』と言ったときには、与えられるようにしたいんです」(奥さま)

置き畳を敷いた和室は寝室や子どもの遊び場に。畳も障子も移 動できるため、和室の場所を変えることができる

今は家全体を遊び場に、のびのびと育っている長男だが、いつか自分の部屋が欲しいと言うだろうか? 「子どもが個室を欲しがるのは、小学校高学年くらいだと踏んでいます。そのときは、現在の寝室とクローゼットを子ども部屋にする予定です。親子が互いの気配を感じ、必要なときに顔を合わせられる空間で過ごすことが、健全な親子関係の構築につながるのだと思います」(ご主人)

玄関を入ると廊下に設えた温かな木の壁が出迎える。右側の白 壁に洗面・浴室、左側の木の壁に寝室とクローゼットが収まる
リビングの一角をデスクコーナーに。5歳の長男はここでお絵描 きをするのがお気に入り
業務用キッチンメーカーでセミオーダーしたステンレスキッチン。 下部をオープンにしてワゴンやゴミ箱を収納

この家に住み始めて1年。ご夫妻の間では、リビング、ダイニング、和室の場所を入れ替える間取り変更案が話し合われ、近々実現しようと考えているのだという。経年とともに家族の気持ちも暮らし方も変わる。住まいのつくりは、井上さん宅のようにもっと気楽に変えられるべきであるものかもしれない。

床はラーチ無垢フローリング。仕切り壁がないから、家中に鉄道 模型のレールをレイアウトできる
text_ Sayaka Noritake(colonna) photograph_ Hideki Okura
取材協力

HOMETRIP Styles of living

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