西宮市内にある築 39年、 62㎡の中古マンションをフルリノベーションして、家族4人の新しい住まいを計画した井上さんご夫妻。家族構成の変化や子どもの成長に合わせて間取りが変えられるプランを希望し、建築家の丹羽洋文さんに設計を依頼した。
井上さんの住まいで目を引くのは、家中に張り巡らされた木のフレーム。その正体は、引き戸を設置するための鴨居だ。 「昔の日本の家のように、広い続き間の空間を襖で仕切ったり、開け放したりすることで、簡単に個室や大空間にアレンジできるようにしました。井上さんが住みながら、自分たちで間取りをカスタマイズできるように引き戸を全て同じ寸法で造作し、いつでもどこにでも設置できるようにしてあります」(丹羽さん)
現在は、寝室とクローゼット、和室に引き戸を設置し、その他の空間をつなげてLDKとして広々と使っているが、洗面・浴室以外をワンルームにもできるし、個室をたくさん設けることも可能だ。 「子どもが幼いうちは、子ども部屋はいらないので、その分家族みんなで過ごせる場所を広くとりたい。でも将来、子どもが『自分の部屋が欲しい』と言ったときには、与えられるようにしたいんです」(奥さま)
今は家全体を遊び場に、のびのびと育っている長男だが、いつか自分の部屋が欲しいと言うだろうか? 「子どもが個室を欲しがるのは、小学校高学年くらいだと踏んでいます。そのときは、現在の寝室とクローゼットを子ども部屋にする予定です。親子が互いの気配を感じ、必要なときに顔を合わせられる空間で過ごすことが、健全な親子関係の構築につながるのだと思います」(ご主人)
この家に住み始めて1年。ご夫妻の間では、リビング、ダイニング、和室の場所を入れ替える間取り変更案が話し合われ、近々実現しようと考えているのだという。経年とともに家族の気持ちも暮らし方も変わる。住まいのつくりは、井上さん宅のようにもっと気楽に変えられるべきであるものかもしれない。