東北地方を中心に個人住宅や店舗の設計を手掛けている佐藤欣裕さん。以前は秋田市のアパートに住んでいたが、5年前にお父さまが経営する建築会社を継いだことをきっかけに大仙市に転居し、一昨年前に家を建てた。
取材に訪れた日は、前日までに降り積もった雪で辺り一面が雪景色。気温が低く、しんしんと寒かったが、佐藤さんの家の玄関を一歩入るとホワッと暖かな空気に包まれる。しかし、エアコンや薪ストーブなどの暖房設備は稼働していないという。 全域が豪雪地帯に指定されている大仙市での家づくりで、大きな課題となるのが寒さ対策。冷たい外気の流 入や建物内の熱の流出を考慮して大開口を設けにくいが、佐藤さんの家は1階も2階も南側全面窓のつくり。
「ガラス面が大きくても、太陽の光が入りやすく、熱が逃げにくい構造にすれば、日差しが暖房になり、ポカポカ暖かい家になります」(佐藤さん) ガラスはフランス製で3枚のガラスと2層の空気層が熱損失を防ぐトリプルガラスを採用。木製の窓枠は国内のサッシメーカーで製作した。 「もう一つ大切なのが、断熱材です。この家は木の繊維を圧縮した断熱材を壁に42㎝、天井に48㎝入れています。断熱材を厚くするほど、室内の熱が外に逃げるのを防ぐことができます」(佐藤さん)
さらに、壁の仕上げに石を張ったり、キッチンの床を土間にしたりするなど、蓄熱効果のある素材使いで暖かさが維持できるように工夫している。 また、この家では太陽光発電と太陽熱利用で電気、給湯を自給自足するオフグリッド住宅を実現している。リビングに設置した薪ストーブは部屋を暖めるだけでなく、薪を燃やす時に生まれる熱量を給湯にも利用。電力会社の送電網とはつながずに自然のエネルギーを最大限活用しながら、経済的で快適な生活環境をかなえている。 「スイスやオーストリアではトリプルガラスも、エコロジー対策も普通のこと。日本も住宅性能が高くなり、サスティナブルな暮らしが当たり前にできるようになると良いと思います」(佐藤さん)
キッチンに導入した薪コンロ。イタリア・Rizzoli社のもの。柔らかな火力でおいしい煮込み料理ができ上がる |