古くからの農村景観が守られている高知県津野町。山に囲まれた豊かな自然の中に、山﨑さんご夫婦とお母さまの3人が暮らす住まいがある。 敷地はご主人が生まれ育った実家が建っていた場所。曽祖父の時代に移築された家で、築100年以上。洗面、浴室、トイレは屋外の小屋にあったという。 「父が亡くなってから母が一人で住んでいたのですが、段差も多く、老朽化した建物に母を住まわせることに不安がありました。また、私自身も人生の後半は生まれ育った土地で暮らしたいと思い、建替えを真剣に考え始めました」(ご主人)
伸びやかで存在感のある軒は壁から2m30㎝突き出している。深い 軒は雨や強い日差しから家を守ってくれる |
設計は家づくりをサポートしてくれる機関から紹介された乃亜建築設計事務所の山本乃夫さんに依頼した。
雨の多い高知県では家づくりの基本がある。瓦で屋根をつくる場合、4・5~5寸の勾配をつけた屋根にすることが一般的となっている。
「外観を山の斜面になじませるために、建物の高さをできるだけ抑えました。耐久性の高いガルバリウム鋼板を使用することで、3寸勾配の緩い屋根を可能にしました。屋根の角度は材料によっても変わります」と話す山本さん。深い軒で家を囲み、雨からしっかり家を守るつくりにした。雨が多ければ、湿気も高くなる。施主の山﨑さんご夫婦は、これを最も気にしたという。
「家の底一面を鉄筋コンクリートのベタ基礎にして土壌面からの水蒸気の侵入をシャットアウトしています。 東面には高窓を設けて風の通りを良くしました。また、壁材に調湿作用のある珪藻土を用いたり、天井や建具も板張りにしたりするなどの工夫を施し、湿気を緩和させています」 (山本さん) ご夫婦が望んでいたテラスもLDKの南に設けられ、外とつながる開放的な住まいが実現した。 「夜、テラスで寝転がって星を見ていると最高に気持ちがいいです」(ご主人)。 奥さまは朝、鳥のさえずりで目が覚めると言う。家庭菜園でおいしい野菜を収穫し、バーベキューを楽しむなど、ご夫婦は存分に自然を満喫している。