イタリアとフランスで建築を学び、現在は東京で住宅や店舗などの設計を手掛けている建築家の野口淳さん。約2年前に故郷の千葉県市川市に自宅を新築した。 「以前は神奈川県川崎市の賃貸マンションに住んでいましたが、自宅を建てるなら、生まれ育ち、両親も住んでいる市川市にと決めていました」
お父さまが犬の散歩中にたまたま見つけたという旗竿敷地。野口さんはグーグルマップで土地の形状や周辺環境を入念に調査し、事前に家のプランを作成。現地を見てすぐに購入を申し込んだ。
「市川市でも珍しいくらい周辺に緑が多いし、東側はパノラマのように開けている。大きい家を建てなければ、庭のスペースも十分に取れると判断しました」 家と同じくらい、庭を大切に考えていたという野口さん。そこで、家の平面を風車の形にプランニング。そうすることで、4つの庭を生み出せると考えた。「大きな庭が1つあるより、いろいろなシーンがあった方が楽しいと思いました」
現在は芝生とデッキの庭、菜園を目指す庭、朝食やお茶をする庭、薪割りをする庭が家の周りを囲み、ヤマボウシやコブシの他、モモの木、リンゴの木など実のなる樹木がたくさん植えられている。 「目指したのは、花が華やかに咲き誇ったいかにもつくられた庭ではなく、本当の自然の中にあるような緑の庭。そこで木を植えたり、土や草いじりをしたりする生活に憧れていたんです」
風車型の家には開口部がたくさん設けられ、どこにいても庭を眺められる。家と庭の一体感があり、室内にいても外にいるような感覚だ。 「大きな家を建てて、立派な家具や家電を置くより、外とつながって、庭で食事やパーティーを楽しんだり、空・風・陽などの自然を感じられる暮らしが、僕たちにとっての豊かさなんです」 種をまいて芝生を育てたという奥さまは、花を植えて花壇をつくったり、野菜を植えて家庭菜園を楽しんだりすることが、子育て後の夢だという。