以前は熊谷市内の中古一戸建てに住んでいた田島さんご夫妻。いずれは家を建てたいと建築雑誌で研究していたある日、1軒の住宅に釘付けになった。 「敷き瓦の土間や梁を見せたダイナミックな空間がとても新鮮で、自分たちもこんな家に住みたいと思いました」とご夫妻。その住宅を手掛けた設計事務所「きらくなたてものや」と施工を担当した岡部材木店に家づくりを依頼した。
新しい住まいへの要望は、前述以外にも、「エアコンをなるべく使わない生活をしたかったので、風通しの良い涼しい家にしたいと伝えました。L字型の平屋造りや、木をふんだんに使うことも希望していました」(奥さま) 設計を担当した日高保さんは、設備機器に頼らず快適に暮らせる家にするために、あえて壁に断熱材を施さない工法を選択。内外真壁構造にして、壁材に荒壁土を使うことを提案した。
リビングの板間は子どもたちのプレイスペースになっている。庭に面した開口には障子戸も設けられ、太陽の日差しを優しい光に変える |
「土壁は熱を蓄える力があるので、夏や冬の急激な温度変化を抑えてくれるのです。また、調湿作用にも優れ、湿度を一定に保つ効果もあります」(日高さん) 開口部には外の景色と風をたっぷり取り込む幅広の引違い窓を採用し、防犯しながら夜間の通風・換気ができる格子戸も設置。他にも、日 差しをコントロールする軒の出、夏はひんやり心地良く、冬は太陽の日差しを蓄熱する敷き瓦の土間など、自然の恵みを有効利用する工夫を随所に盛り込んでいる。
土間に張った敷き瓦は、屋根と同じ瓦を焼いたものです。焼きむらで1枚1枚表情が違う瓦が並んでいる様子が美しく、とても気に入っています」(奥さま) 「3年前の夏にこの家に引っ越してきて、今 までの家の暑さは何だったんだ!と思うほど涼しくて感激したことを覚えています。今もほとんどエアコンをつけずに、自然の風の程よい涼しさで気持ち良く暮らしています」(ご主人)