1999年に結婚して以来、ご主人が学生時代から住んでいる家で暮らしてきたYさんご夫妻。結婚当初から建替えを希望していたが、忙しさに取り紛れて時が経ち、そのままに。重い腰をあげたのは、東日本大震災がきっかけだったという。
「本棚がいくつも倒れ、散々な状態。その上、この地域が液状化危険地域だということが分かったのです」と奥さま。実はご夫妻は共にエネルギー関連の研究者。建替えにあたっては、まず断熱にこだわり、省エネ住宅を目指した。 設計はインターネットで調べ、狭小住宅を多く手がけ、構造も重視した家づくりを行っている建築家、杉浦事務所の杉浦宏幸さんに依頼。 「省エネ対策については、かなり細かいことまでリクエストしました」(奥さま)
2 玄関の土間は墨モルタル金ゴテ押さえ。下足入れはシナ合板で造作。外光を取り入れながら、収納を十分に確保 |
断熱については、外断熱工法、高性能断熱材「ネオマフォーム」を採用し、壁・床・天井に断熱材を北海道並みに敷き込むこと。窓はなるべく樹脂サッシを使い、熱の出入りが多い大きな窓は二重サッシとし、Low- E複層ガラスを使うこと。このほか、太陽光発電パネルの設置も希望した。
「インテリアは、本棚をできるだけ たくさんつくり付けてほしい、ということくらい。間取りや内装は全て杉浦さんにお任せしました」(奥さま) 住み始めて4年。省エネ効果は計画通り発揮されているという。
「日本の一般家庭の電気使用量の平均が年間約4000kWhですが、わが家は約2200kWhに収まっています。申請はしていませんが、次世代省エネ基準をクリア。暖房や冷房に頼らない家は気持ちがいいです」と奥さま。一方、杉浦さんは、1階と3階の高さを最低限に抑え、2階に天井高が3.4m ある吹抜けのLDKを実現させ、大らかで快適に過ごせる空間をつくった。 「不安はありましたが、小さくても居心地のいい家はできるものですね。この家で暮らし始めてから休日も家 で過ごすようになりました」(奥さま) 今は、家の中をどう飾ろうか考えるのが、日常の楽しみの一つだ。