大阪の中心地から和歌山県白浜町に移住したグラフィックデザイナーのNさんご夫妻が暮らす住居兼事務所を訪れた。 ご主人は1970年代初めに上京し、六本木などに事務所を構えて19年間第一線で活躍。その後、故郷の大阪に戻り、サラリーマンを経て奥さまと会社を立ち上げ、仕事中心の生活を送っていたという。
白浜への転居を決めた理由については、「主人が60代後半になり、生活環境を変えたいと思い始めました。インターネットとパソコンがあれば、どこにいても今の仕事は続けられます。二人とも元気なうちに自然が豊かな所で、やりたいことをやろうと決心しました」と奥さまは話す。
新たな住まいとして購入したのは、1973年築、鉄筋コンクリート造の2階建て。元は企業がクライアントを接待するための別荘として使われていた建物で、三段壁、千畳敷といった景勝地が続く「吉野熊野国立公園」の海岸線を見下ろす立地にあり、徒歩1分で海岸に行ける絶好のロケーション。さらに南紀白浜空港までは車で10分。東京での打合せに日帰りできることも、今も現役で活躍するご夫妻にとって好都合だった。
内装は知り合いの建築家、貴志泰正さんに設計を依頼し、全面的にリフォーム。1階をご夫妻の事務所と居住スペース、2階をゲストルームとし、既存の天井を取り払って構造躯体を現し、開放的な空間に仕上げた。温泉が引かれた浴室は、ほぼ既存のまま残している。
「仕事も落ち着いて集中できます。せかせかしなくなり、気持ちに余裕ができました。きれいな空、星、夕焼けを見たとき、広大な海を眺めているとき、おいしい水を味わったとき、自宅の温泉に浸っているとき…幸せに感じ、白浜に来て良かったと、つくづくと思います」とご夫妻は口をそろえる。 現在は釣りに凝っているというご夫妻。今後はスキューバダイビングやクルーザーの免許取得にも挑戦したいと、のびやかな環境で好奇心旺盛に歳を重ねている。