30畳のLDK。平面を「へ」の字に曲げることで、強い西風を和らげ、奥行きも強調される
富山県は日本全国で持ち家率1位、1軒当たりの延べ床面積も、もっとも広いといわれる。富山県砺波市でチューリップ農園を営む伊藤さんは、奥さまと2人のお子さんとの4人家族。昨秋、実家の田んぼを宅地に転用して新居を建てた。それまでは市内のアパートに住んでいたが、長女が小学校に上がるまでには家を建てたいと、3年前から家づくりに動いたという。
「この辺の人は、結婚して1~2年、32~35歳で一軒家を建てる人が多いです。うちは決して早い方ではありません」と伊藤さん。 はじめは大手ハウスメーカーの住宅展示場や地元の工務店の内覧会などを精力的に訪れた。しかし、ピンとくるものがない。「家づくりって、そんなにワクワクするものではないのか…」と意気消沈して友人に話すと、建築家との家づくりを勧められる。それが富山市に拠点を置く中斉拓也建築設計の中斉拓也さんだった。
中斉さんが導いたプランは、間口31mの敷地に見合う、どっしりとした平屋に近い家。また、ガレージ→玄関土間→ 廊下→LDKまで、約30m同じ天井の梁を続け、空間のつながりを強調した。 「梁が細かいのは、雪の荷重を分散して家に負担をかけないためですが、この構造がデザインにもなっています」(中斉さん)
ダイニングチェアはデンマークを代表するデザイナー、ハンス・J・ウェグナーが手掛けた「CH88」をセレクト |
庭を挟んでご両親が暮らす家があるが、家の中に入ってしまえば、お互いに気配を感じることなく過ごせるという。 「延べ床面積は60坪強ありますが、近隣の家と比べるとそんなに大きく感じません。でも、居心地のいい家になったと思います」と伊藤さん。家づくりは楽しく、いつか、もう1軒建ててみたいと思っているそうだ。