外側にブラインドをかけているような一年中快適なダブルスキンの家
レッドシダーのルーバーに囲まれた印象的な外観。南東側の曲線は船の舳先をイメージしてデザイン
2016.08.22

外側にブラインドをかけているような一年中快適なダブルスキンの家

木製ルーバーが住まい全体を柔らかく包み込み、風と光を通す。自然界とやさしくつながる、夏涼しく、冬暖かい住まいを実現

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スギ張りの建物の外側を、さらにレッドシダーのルーバーで囲んだ個性的な住まいは、青森県むつ市の閑静な住宅地でひときわ目を引く。
 「ルーバーが自然光と風を室内にうまく取り入れてくれるんです」そう話すのは、設計を手掛けた松浦一級建築設計事務所の松浦良博さん。140㎜間隔のルーバーが、夏は高い位置からの強い日差しを緩和し、冬は横から差し込む日差しを通して、夏涼しく、冬暖かく室内環境を調整しているという。さらに松浦さんは続ける。

物件データ 所在地/青森県むつ市
面積/101.12m²
築年月/2015年5月
設計/松浦一級建築設計事務所
www.matsuura-home.co.jp

「むつ市の夏の太陽高度は約72度。冬は約22度です。この太陽高度から計算して、一番効果的なルーバー間隔を求めました。これ以上広いと夏の直射日光が入りすぎるし、狭すぎると冬の日光が入りにくい。夏は直射日光を遮りたい、反対に冬は光を入れたいという矛盾を解決しています」  この家で暮らすのはTさんご夫妻と娘さん2人の4人家族。さぞ熱心にこだわって家づくりに臨んだと思いきや、家を建てる予定はなく、「まだまだ先のこと」と思っていたそう。

軒がルーバーを雨から守る。ルーバー角度を3度傾斜させ、雨水が自然に流れ落ちるようにしている
シンボルツリーが真ん中に佇む中庭。夏はリビングに木陰をもたらしてくれる
吹抜のリビング。床は青森産のスギ材。大きな開口部を配し、ルーバー越しの柔らかな光が室内に降り注ぐ

「たまたまふらっと展示場に寄っただけなのですが、松浦さんの説明を聞いて、合理的で素晴らしい家だと感激してしまって。当時建設中だった建売りを購入することにしたんです」 (ご主人)
 いわゆる衝動買いをしたTさんご夫妻だが、結果は大正解。室内にも木がふんだんに使われ、中庭から心地よい風が流れ込み、森の中に住んでいるような気持ち良さを毎日味わっている。昨年の10月から住み始め、冬は想像以上に暖かく過ごせた。

奥さまの希望でもあった対面式のシステムキッチン。カウンターを付けて調理スペースを広く確保
2階の子ども部屋は、現在はワンルーム。吹抜で1階とつながり、2階で遊んでいる子どもの声が届く

この夏も、どのくらい涼しく暮らせるか楽しみだという。
「ルーバーは直射日光を遮るだけでなく、外からの視線をカットしてくれます。プライバシーを確保できるため、窓を開けっ放しにできることも大きな効果です。風が家の中を通り抜け、木の香りを運んでくれるので、相当涼しく感じると思います」(松浦さん)
自然とのつながりやエコな暮らしがますます注目を集めている。ルーバーで周辺環境を優しく招き入れるTさん宅のアイデアは、郊外に限らず、都市部でも活用できそうだ。

LDKより1m40㎝高く設けた寝室や水まわりへは、スロープ状の廊下を通って行く造りに
text_ Sayaka Noritake photograph_ Akira Nakamura
取材協力

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