南方向に吉野川の土手や田園を望む敷地を購入し、マイホームを建てようと決心した藤原さんご夫妻。新居の設計は、3年間探した末、徳島市で行われた建築家展で出会ったCONTAINER DESIGNの岸本貴信さんに依頼することにした。 一生に一度建てる家として、満足できるものにしたいと祈念していたご夫妻は、A4用紙4枚にびっしり箇条書きした要望書を岸本さんに提出したという。その筆頭は「40フィートの輸送用コンテナを2基使って住まいを構築したい」という遊び心溢れる内容だった。
「コンテナを、私の趣味であるバイクいじりや音楽を楽しむ場所、妻が書道を嗜む場所にしたらどうかと思ったんです。見栄えも一風変わって、面白いのではないかと考えていました」(ご主人) ご夫妻のユニークな発想を受けた岸本さんは、「輸送用コンテナと家族が生活を営む居住スペースをどうつなげていくかが設計の課題でした」と、建物の形状や間取りを検討。導いた答えは、輸送用コンテナに加えて20フィートのコンテナに見立てた木造の箱を3基つくり、合計5基のコンテナを横に並べて住まいを計画するというものだった。
「ある程度の距離をあけてコンテナを横に並べると、コンテナ内の閉ざされた空間とコンテナ外の開放的な空間が交互に生まれます。コンテナ内には寝室や水まわり、収納などを配し、コンテナ外は、リビングダイニングと子ども部屋にしました」(岸本さん)
家族が集まるリビングダイニングや子ども部屋は、南北の壁が一面ガラス窓になった、外とつながる空間に。空や庭の緑が気持ちよく感じられる場になった。 「実際に住んで『快適』のひと言です。家族が長い時間を過ごすリビングダイニングが明るいのが一番うれしいですね。室内にいながら、庭と一体感が得られるのも気に入っています」とご夫妻。 「今日もよろしくね」と毎朝、家に語りかけながら楽しく暮らすというご主人。これからの楽しみは、DIYで輸送用コンテナに音楽室をつくることだ。