観光客で賑わう軽井沢駅から車で15分。辿り着いたのは、ひんやりとした空気が心地よい森の中の閑静な別荘地。一角にあるIさんご夫妻の新居は、周囲の建物に比べるとひと回り小ぶりな、山小屋のような愛らしい家だ。
「軽井沢の別荘地は、坪単価は安いけれど300坪~の売地が多くて、とても手が届きません。でもこの土地は、90坪で広さも価格も許容範囲内。北側が開けているので、上手く外とつなげれば、狭さを感じない開放的な家が建てられると思い購入しました」(ご主人)
家づくりの依頼先は、地域の特性を熟知している軽井沢在住の建築家を希望し、霜鳥聡志さんに設計を依頼。ご夫妻が望んだのは、「2階のリビングから外の景色を眺める生活がしたい」ということのほかに、「趣味の車いじりを楽しめるスペースが欲しい」、将来お子さんやお母さまと暮らすことを想定して、「2つの個室と夫婦の寝室が必要」などの要望があった。
「要件を満たしつつも、建物のボリュームを最小限に抑えるために、小さな正方形の箱を雁行させる2階建てプランを考えました。建物の中央に階段を配置すると上下階で4つのゾーンが生まれ、それぞれにガレージ、LDK、個室、寝室と水まわりが収まるコンパクトなプランが出来上がりました」(霜鳥さん)
雁行型の設計により、各居室で2面以上の開口を取ることが可能に。LDKには2.5m幅の大きな窓も設けられ、周囲の緑や遠くの浅間山を望めながら寛げる居心地のいい空間が生まれた。さらに樹幹をイメージさせる大黒柱を中心に据え、内外の一体感を強調している。
外観は木を多用しながらも、冬の風雪から身を守るため、ガルバリウム鋼板を採用。森の環境に溶け込むひそやかな佇まいだ。避暑地や観光スポットとして人気の軽井沢は、都心部へのアクセスもよく、近年定住する人が増えているという。
「静かな環境だけど、ご近所さんが適度にいるので安心して暮らせます。ここに来て、家にいる時間が増えたような気がしますね。外をぼうっと眺めていると突然、野生のリスが目の前を通り過ぎて行くこともあって、それがとても可愛くて。テレビを見ずに外ばかり見て過ごしています」(奥さま)