まるでキュビズムの世界?! 木造アパートを ワンルーム空間の一軒家にリノベーション
8戸が収まっていた木造アパートを大胆に斜めにくり抜いて、さまざまな住スペースを創出 カラフルなパッチワークの集合体のような楽しい家
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この家を初めて訪れたときの感想を述べるのは難しい。まるでキュビズムの世界に迷い込んでしまった感じだ。中央に大きな吹き抜け空間があり、それを取り囲むように4色に塗り分けたコーナーが設けられているのだが、仕切り壁はどれもランダムに交差し、三角や四角の立体的なパッチワークのような様相を呈している。
元は1階、2階のそれぞれに4戸ずつのワンルームがあった木造アパート。その中を大きく斜めにくり抜いて、1軒の家にしてしまった。その穴も単純な四角ではなく、わざと水平や垂直をずらした多面状に開けることで不思議な空間が生まれた。 施主の佐々木さんご夫妻は、12才と9才のお嬢さんをもつ4人家族。初めは両親から譲り受けたこのアパートを取り壊して、一戸建てを建てるつもりだった。相談を受けた奥さまの弟で建築家の河内一泰さんは振り返る。
施主の佐々木さんご夫妻は、12才と9才のお嬢さんをもつ4人家族。初めは両親から譲り受けたこのアパートを取り壊して、一戸建てを建てるつもりだった。相談を受けた奥さまの弟で建築家の河内一泰さんは振り返る。 「アパートの解体費だけで300万円ほどかかり、予算内で一戸建てを建てようすると、半分くらいの大きさの家しか建てられません。それなら、リノベーションをしたほうが賢明なのではないかと提案しました」
佐々木さんご夫妻から新居への要望は、廊下がなくて、子どもたちが帰ってきたときに必ずLDKを通ること。どこに居ても家族の気配が感じられること。大きなダイニングテーブルとグランドピアノが置けるスペースが欲しい。それだけを伝えて河内さんにプランニ ングを任せた。 初めて建築模型を見たときは、「斬新すぎる」と驚いたそうだが、要望は満たされているし、元のアパートの閉鎖的なイメージもない。奇抜なデザインは面白いかもしれないと、GOサインを出すのは意外と早かったという。
「奇抜に見えますが、住み慣れるに従って居心地がよくなってきました。家族の気配もよく分かりますが、程よい死角もあちこちにあって、案外落ち着くんです。今は観葉植物に凝って、どこにどんな植物を置けば空間が生きるか研究しているところです」(ご主人) 照明は場所ごとに一つ一つ違うデザインのものをチョイス。カーテンも部屋ごとに異なる。複雑に絡まる空間や色彩が、ワンルームの大空間に多彩な居心地をつくり出している。