1998年にイギリス・ロンドンに渡り、翌年にフランス人のオリビエ・チャールズさんと結婚。ふたりの男の子をもうけ、ご自身も教師として働きながら暮らしていたチャールズ裕美さんは、2009年に11年間の英国暮らしに終止符をうち、生まれ故郷の岡山県に家族で移住した。
「当時、主人の仕事はオンライン広告の会社経営。海外出張も多く、子どもと触れ合う時間がありませんでした。ロンドンは治安が 悪く、子どもを遊ばせる場所も少なく、私も子育てに四苦八苦していました。そんなとき、父が祖母の家が空き家になっているから住まないか、と声をかけてくれて、思い切ったのです」と、裕美さんは地元に戻った経緯を話す。
裕美さんのおばあさまは生前、自宅の図書館を開放して、子どもが集う場所にしていた。 ご夫妻はおばあさまに敬意を払い、自分たちの事業を「軒下図書館」としてメーキングしていくことに。帰国後はまず、築60年の民家をリフォーム。半年の準備期間を経て、語学スクールを始め、その後、住まいの2階をB&B(ベッド&ブレックファースト:宿泊施設)に。さらに、敷地内の納屋でフランスパン工房&カフェも始めた。「なぜそんなにいろいろやるの?と周囲から言われましたが、当時私たちがここに住むためには、できることはなんでもやらないと暮らしていけなかったのです」とご夫妻。
2013年にはヨガスクールも開校。やっとここ1〜2年で事業が安定し、子どものための時間も十分とれるようになった。子育てにあたっては、将来を考えて英語は話せるようにと、英語で会話しているという。 「西粟倉の学校では、自分の生活と森のつながりを教えてくれたり、童話に出てくるメニューを取り入れて、好き嫌いが減るよう工夫したりと食育も盛ん。生産者がどういう気持ちで野菜をつくっているかということも子どもたちに伝えていて、とても良い教育だと思っているんです」(裕美さん) 自然災害が少なく、気候が温暖で、食べ物が豊富で美味しい岡山県には、最近都市から移住してくる若い家族が増えている。自分たちと同じように、豊かな自然のなかで新しい生活をスタートさせる人たちをチャールズ夫妻は歓迎している。