「空」を活用して住み良い環境づくり。 多世代が交流できるシェアハウスが誕生
空き家をシェアハウスに転用した「緑道下の家」。庭には菜園やマルシェができるスペースも
2015.04.20

「空」を活用して住み良い環境づくり。 多世代が交流できるシェアハウスが誕生

1965年から開発された大阪府堺市の南部丘陵地帯に広がる泉北ニュータウン。 半世紀が経ち、少子高齢化や過疎化が進むこの街を、「つながり」で結ぶ

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泉北ニュータウンは、現在約13万人、5.4万世帯が住み、西日本最大級の規模を誇っている。しかし、街開きから48年を経て徐々に高齢化が進み、老年人口比率が全体の約30%を占め、35%を超える住区もあるという。団塊の世代が最多なことから、今後、急速な高齢化や空き家・空き店舗の増加が懸念されている。

物件データ 所在地/大阪府堺市
面積/134.28m²
築年/2014年
www.city.sakai.lg.jp/shisei/toshi/senbokusaisei/index.html
広々とした玄関土間。外にいる人と会話ができるように、右側の壁に大きな窓を設けた
広々とした玄関土間。外にいる人と会話ができるように、右側の壁に大きな窓を設けた
増築して設けたキッチンは庭に面し、自然光がたっぷり注ぐ。皆で使いやすいオープン収納に
増築して設けたキッチンは庭に面し、自然光がたっぷり注ぐ。皆で使いやすいオープン収納に

こうした問題に向き合い、泉北ニュータウンの再生を図るさまざまな取り組みを行っているのが、地元のNPO法人「すまいるセンター」だ。代表の西上孔雄さんは話す。
 「ニュータウンは各住区に商業店舗を配し、住民は徒歩圏内で生活がまかなえるように計画されています。店舗がなくなるということは、都市計画が壊れるということ。遠くの大型店舗に車で買い物に行かなくてはならなくなり、運転ができない人や高齢者など、生活に困る人がたくさん出てきました。そういった人たちも安心してここに住み続けられる支援をしていこうと、地元自治会、NPO法人、大学、府、市の産学官民が連結した『ほっとけないネットワーク』を設立させたのです」

玄関から室内を見渡す。耐震補強のために新設したブルーの鉄脚が、インテリアのアクセントに
玄関から室内を見渡す。耐震補強のために新設したブルーの鉄脚が、インテリアのアクセントに

戸建てを多世代型シェアハウスにコンバージョンした「ほっとけないネットワーク」のプロジェクトの一つ。設計を手掛けたのは、大阪市立大学大学院生活科学研究科の教員と学生たちだ。
 「既存の建物の骨組みだけを残して再構築したスケルトンリフォームです。構造補強もしっかり施し、現在の耐震基準に適合した強度になっています」と話すのは、同大学講師・白須寛規さん。13畳の広々としたリビングダイニング、庭に面した明るいキッチン、菜園は共有で使う。居室は全部で4つあり、各室は6.5〜10.5畳の空間でトイレと洗面台を装備し、テラスか庭が付いている。インテリアは、障子や欄間は既存の家のものを使うなど、当時の面影を残し、高齢者でもなじみやすいようにしつらえた。

2階の廊下にはミニキッチンを設けた。床はレトロな雰囲気を
醸し出す白×茶色のタイル貼り
2階の廊下にはミニキッチンを設けた。床はレトロな雰囲気を醸し出す白×茶色のタイル貼り
個室は1階と2階に2室ずつある。どの部屋もトイレと洗面台付きで窓があり、快適に過ごせる
個室は1階と2階に2室ずつある。どの部屋もトイレと洗面台付きで窓があり、快適に過ごせる

一つの家で世代を超えた複数の人たちが助け合い、一緒に料理をし、食卓を囲む―家族のようなつながりが生まれ、高齢者が孤立せず安心して住める多世代型シェアハウス。これからの時代にふさわしい、地域再生に向けた新しい住まいの在り方として、社会に広がっていくことだろう。

泉北ニュータウン内の空き店舗を改修した「槇塚台レストラン」。メニューは大学の栄養学の教員が担当している"
泉北ニュータウン内の空き店舗を改修した「槇塚台レストラン」。メニューは大学の栄養学の教員が担当している
地場野菜の販売などを行う「まちかどステーション」もニュータウン内の空き店舗を活用した地域の憩いの場
地場野菜の販売などを行う「まちかどステーション」もニュータウン内の空き店舗を活用した地域の憩いの場

text_ Sayaka Noritake(colonna) photograph_ Akira Nakamura

取材協力

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