泉北ニュータウンは、現在約13万人、5.4万世帯が住み、西日本最大級の規模を誇っている。しかし、街開きから48年を経て徐々に高齢化が進み、老年人口比率が全体の約30%を占め、35%を超える住区もあるという。団塊の世代が最多なことから、今後、急速な高齢化や空き家・空き店舗の増加が懸念されている。
こうした問題に向き合い、泉北ニュータウンの再生を図るさまざまな取り組みを行っているのが、地元のNPO法人「すまいるセンター」だ。代表の西上孔雄さんは話す。 「ニュータウンは各住区に商業店舗を配し、住民は徒歩圏内で生活がまかなえるように計画されています。店舗がなくなるということは、都市計画が壊れるということ。遠くの大型店舗に車で買い物に行かなくてはならなくなり、運転ができない人や高齢者など、生活に困る人がたくさん出てきました。そういった人たちも安心してここに住み続けられる支援をしていこうと、地元自治会、NPO法人、大学、府、市の産学官民が連結した『ほっとけないネットワーク』を設立させたのです」
戸建てを多世代型シェアハウスにコンバージョンした「ほっとけないネットワーク」のプロジェクトの一つ。設計を手掛けたのは、大阪市立大学大学院生活科学研究科の教員と学生たちだ。 「既存の建物の骨組みだけを残して再構築したスケルトンリフォームです。構造補強もしっかり施し、現在の耐震基準に適合した強度になっています」と話すのは、同大学講師・白須寛規さん。13畳の広々としたリビングダイニング、庭に面した明るいキッチン、菜園は共有で使う。居室は全部で4つあり、各室は6.5〜10.5畳の空間でトイレと洗面台を装備し、テラスか庭が付いている。インテリアは、障子や欄間は既存の家のものを使うなど、当時の面影を残し、高齢者でもなじみやすいようにしつらえた。
一つの家で世代を超えた複数の人たちが助け合い、一緒に料理をし、食卓を囲む―家族のようなつながりが生まれ、高齢者が孤立せず安心して住める多世代型シェアハウス。これからの時代にふさわしい、地域再生に向けた新しい住まいの在り方として、社会に広がっていくことだろう。
地場野菜の販売などを行う「まちかどステーション」もニュータウン内の空き店舗を活用した地域の憩いの場 |