広大な敷地に整然と並ぶ棟、クリーム色の外壁に大きく書かれたアルファベットと数字、広場にはこの団地で生まれ育った子どもたちに愛されてきたであろうブランコ…。懐かしさ溢れるこの団地は、日本最初の大規模ニュータウン開発として建てられた「千里ニュータウン」の一つ。1967年築のこちらの団地に2012年4月から入居しているのが、共に27歳のSさんご夫妻だ。ご夫妻が暮らすのは、無印良品とUR都市機構の共同プロジェクトでリノベーションされた「新千里西町団地」。仕切り壁を取り去り、白い塗装が施された開放的な空間に、若い感性でコーディネートされたインテリアがよく似合っている。
「結婚が決まり、初めて暮らす家を探し始めたときに、この団地に暮らす姉が、ここの募集が出ていることを教えてくれたんです。抽選だったので、どうせ当たらないだろうと思いながら申し込んだら、見事当選し」(奥さま)。まだどんな家に住みたいかのイメージも固まっていない段階での当選だったため、自分たちが本当に暮らしたいのはどんな家なのかを探ろうと、当選後にいくつかの賃貸物件を回ってみたという。
「僕自身は団地というと、古い、狭いといったイメージがあったのですが、デザイナーズマンションも含めて5軒の賃貸住戸を回って比較しても、陽当たりや風通しの良さ、間取りのシンプルさなど、ここが一番魅力的でした。団地は陽当たりがとてもよく考えられていて、全ての住戸が南に向いているんです。この部屋はさらに、壁を取り去ってあるので、日中は照明がまったくいらないほど明るいですね。夏も南北に風が通るので快適でした」(ご主人)。
高度成長期の住宅不足を解消すべく建てられた団地は、限られた床面積を細かく仕切る造りが主流だった。しかし、年月を経て高齢化や核家族化が進んできているという。そこで古き良き日本の佇まいを生かしながら、今の暮らしに合うリノベーションを施す団地が増えてきている。新たな世代が新たなスタイルで団地に暮らし始める。団地はこれからも多くの人に愛され、住み継がれていくことだろう。