70代で建てる終の住処平屋で、夫婦の趣味を満喫
軒先には広々とした濡れ縁デッキ。柿渋で仕上げた外壁がなんとも味わい深い
2013.09.20

70代で建てる終の住処
平屋で、夫婦の趣味を満喫

土いじりとお菓子づくりを楽しむ妻と、オカリナを愛する夫。程よいサイズの住まいで、第二の人生を謳歌する

TRIP
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子を巣立たせ、仕事も無事勤め上げた後、第二の人生を過ごす「終の住処」づくりにあこがれる熟年層は多い。70代の石渕利男さんと奥さまもそんな一組だった。小学校の教員だったご主人は26歳で結婚。3人の子どもに恵まれ、結婚10年目には2階建ての一軒家を建てた。若い頃からさまざまな趣味に没頭してきたご主人だったが、40代にさしかかる頃、旅先で偶然、オカリナ奏者の宗次郎氏に出会ったことから人生が一変する。
「目の前で吹いてくれたオカリナの音色に感動し、自作していると聞いて自分でもつくりたくなりました。それで何も分からないのにすぐ土を買って帰ったんです」(ご主人)。

物件データ 所在地/神奈川県相模原市
面積/59.62m²
築年/2012年12月
設計/前田工務店、シミズアトリエ
施工/前田工務店 maedakoumuten.jp
茶室のような静謐な佇まいの外観。敷地の境界には塀や門を設けず、広がりを持たせた
広くとった前庭が開放的。深い軒の縁側は、近所の方と談笑する憩いの場にもなっている

まったくの独学で土をこね、試行錯誤をくり返すうちに音が出るようになり、さらに吹き方も独自で研究を重ねた。そのうちに地域の公民館でオカリナ教室を開講してほしいと声がかかり、あちこちでコンサートも行うまでになった。一方、奥さまは土いじりを趣味としていたが、庭が狭く、広い畑で思い切り野菜や花を育てたいと思っていた。
「足腰が弱く、階段の昇降がつらくなってきたし、子どもたちが独立してからは広い家を持て余していました。それで、ゆくゆくは畑仕事ができて程よい狭さの平屋で暮らしたい、と話していたんです」(奥さま)。


住み替えに当たり、大量のものを処分。必要最小限のものだけをロフトに収納
住み替えに当たり、大量のものを処分。必要最小限のものだけをロフトに収納
勾配天井がシンプルな空間のアクセントに。庭に面した大きな開口から光が差し込む
勾配天井がシンプルな空間のアクセントに。庭に面した大きな開口から光が差し込む
バスルームと一直線につながる使い勝手の良いキッチン。ここで奥さまは存分に料理を楽しむ
バスルームと一直線につながる使い勝手の良いキッチン。ここで奥さまは存分に料理を楽しむ

ご主人の退職を機に、趣味を存分に楽しめる家づくりを考えるようになり、最初の家からほど近く、庭が広く取れる土地を探した。設計は、以前住まいの修理を頼んだことのある馴染みの工務店に依頼。間取りはシンプルでも互いの趣味が楽しめ、人を呼びやすい平屋の住まいに、という希望を伝えた。子どもたちも、両親が充実した老後を過ごせるなら、と生まれ育ったわが家を手放すことに同意してくれた。ご主人は杉の無垢材の床やオカリナの製作作業ができる広い土間の玄関が、奥さまは畳敷きの和室と、落ち着ける洋間の寝室がそれぞれ気に入っているという。庭で育てた新鮮な野菜や果物を使って料理の腕を振るい、軒先に構えた窯でオカリナを焼く。新たな住まいで趣味を満喫する2人には、これからもますます充実した毎日が待っているようだ。

広々とした土間の玄関は、ご主人のオカリナ製作スペースにもなっている
広々とした土間の玄関は、ご主人のオカリナ製作スペースにもなっている
膝が弱い奥さまのために布団ではなくベッドを使用しているため、寝室はフローリングに
膝が弱い奥さまのために布団ではなくベッドを使用しているため、寝室はフローリングに

text_ Takako Yoshida photograph_ Akira Nakamura

取材協力

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