縁側と路地がつなげる、ほど良い距離感の中で暮らす
縁側越しに隣家の黒板壁が見える風景も昭和的。家に合わせてしつらえた和家具が暮らしに映える。
2012.11.20

縁側と路地がつなげる、ほど良い距離感の中で暮らす

50年前にタイムスリップしたような、貴重なたたずまいの長屋。つかず離れずのご近所付き合いも楽しい、古くて新しい賃貸生活。

TRIP
07

敷地を囲う木塀、狭い路地、型板ガラスがはめ込まれた木枠の窓、庭に張り出した縁側…。まるで映画『ALWAYS 三丁目の夕日』から抜け出して来たような、懐かしい光景が広がる「大森ロッヂ」は、昭和30年代から40年代にかけて建てられた木造長屋を、当時の面影そのままにリノベーションした賃貸住宅だ。
「学生時代に京都にいたこともあり、いつかは古い家に住みたいと思っていました」
そう話す小原幸恵さん(37歳)が、入居したのは3年前。
入居者募集を知ったときはまだ工事中だったというが、「どんな部屋になるか分からなかったけれど、ノスタルジックな外観の写真を見て、入居を即決しました。出来上がった部屋に一歩足を踏み入れたときは、木枠のガラス戸や木製の扉などが昔の佇まいのままきれいに残っていて、感動しましたね」

物件データ 所在地:東京都大田区大森西 
住戸数:6棟 計12戸 専有面積:23.74m²
設計:株式会社ブルースタジオ bluestudio.jp
「大森ロッヂ」 www.omori-lodge.net
天井を撤去して、建築当時から残る梁(はり)を露出。平屋だが、天井の高さがあるため開放的。
天井を撤去して、建築当時から残る梁(はり)を露出。平屋だが、天井の高さがあるため開放的。

『ヒト・モノ・マのゆるやかなつながり』をコンセプトに再生された大森ロッヂでは、縁側や細い路地を介して、住人同士の気配がほのかに感じられるようなつくりになっている。小原さんは、その距離感がとても心地良いという。
「夜、仕事から家に帰ってきて、誰かの家の明かりがついているとほっとする。同じ家に住んでいるわけではないけれど、『帰ってきたよ、ただいま』という気持ちになる。家に人がいる気配が分かるから、『これからうちで一緒にごはんを食べない?』といったご近所さんへのお誘いもしやすいし、ご近所とのつながりがあることは、東日本大震災のときも本当に心強かったですね」

シンプルなつくりのキッチン。型板ガラスがはめ込まれた木枠の窓が郷愁を誘う。
シンプルなつくりのキッチン。型板ガラスがはめ込まれた木枠の窓が郷愁を誘う。
玄関からキッチン方向を見る。手前右側のアンティークの長持ちには、布ものを収納している。
玄関からキッチン方向を見る。手前右側のアンティークの長持ちには、布ものを収納している。
在宅時は縁側のガラス戸を開けていることが多い。ここでご近所さんとおしゃべりすることも。
在宅時は縁側のガラス戸を開けていることが多い。ここでご近所さんとおしゃべりすることも。
路地に設けられたあずまやは、住人の憩いの場所。住人や関係者による祭りも度々催されている。
路地に設けられたあずまやは、住人の憩いの場所。住人や関係者による祭りも度々催されている。

それまでは、家は『帰って寝るだけ』の空間だったが、この家に暮らし始めて、『くつろいだり気持ちを切り替えたりできる場所』になったという。日本の古家具や、縁側に植物などが置かれた小原さんの部屋からは、日々の暮らしを丁寧に楽しんでいる雰囲気が伝わってくる。
リノベーションの魅力に触れたことがきっかけとなり、リノベーション関連の会社に転職したという小原さん。住まいを通じて出会った、より自分らしい仕事と暮らしを満喫している。

text_ Takako Yoshida photograph_ Akira Nakamura

取材協力/atelier E03(株式会社アトリエ イーゼロサン)

取材協力

HOMETRIP Styles of living

明かり取りのガラス入りの木の扉の向こうはトイレ。手前右側にはシャワー室がある。 平屋の1棟を2戸に分けたうちの1戸が小原さんの住まい。専用玄関から入る。 黒板壁の外観を持つ木造住宅が路地に並ぶ平屋と2階建ての全12戸で構成される。
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